1. 酸化ストレスを消去して緑内障を抑える栄養と食物
日本人に多い正常眼圧緑内障は、治療で眼圧を下げても視野障害が進行する人が少なくありません。そこで、緑内障の研究において、眼圧以外の原因である、加齢、血流、酸化ストレスなどのさまざまな因子の中から酸化ストレスと血流についての研究が特に注目されています。
「酸化ストレス」とは、老化や心身の疲労とストレス、睡眠不足、喫煙、有害光である紫外線やブルーライトなどにより悪玉物質である活性酸素が発生し、それが引き起こす生体に有害な作用のことです。健康な人体には抗酸化力があり、活性酸素を除去したり、障害の抑制や修復を繰り返しています。しかし、抗酸化力が弱まり、活性酸素が増えてくると抗酸化システムのバランスがくずれて「酸化ストレス」が著しく増大するという事態が起こります。
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2. 眼の健康に役立つ、話題の成分「フィトケミカル」
このように活性酸素が過剰に溜まってしまうことで、私たちの眼と体が酸化してサビついてしまう「酸化ストレス」は、眼と体に数多くの病気をもたらします。それを防ぐためには、抗酸化力の高い食品を積極的に食べるように心がけたいものです。
抗酸化作用の高い物質として、最近注目されているのが「第七の栄養素」といわれる「フィトケミカル」です。フィトケミカルは、緑黄色野菜や果物の色素や香り成分、辛味や苦味成分の中に含まれる機能性色素成分です。
中でも眼と体の健康に役立つといわれる主な成分が、アントシアニン、カカオポリフェノール、ヘスペリジン、ルテイン、アスタキサンチン、リコピン、カテキン、レスベラトロールなどです。
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3. 驚き!カシスアントシアニンの血流改善効果
アントシアニンを多く含むといわれるのがブルーベリーですが、その3倍も含まれていることで注目されているのがカシスです。カシスには4種類のアントシアニンが含まれており、そのうち「シアニジン」などの2種類はカシス特有のもので、ブルーベリーには含まれていません。
札幌医科大学眼科の大黒教授グループの研究によると、カシスから抽出したアントシアニンを正常眼圧緑内障の人30人に、毎日50ミリグラムずつ半年間飲んでもらったところ、網膜や視神経の血流量が平均20パーセント増えるとともに眼圧上昇も抑えられたという成果が報告されました。また、治験終了後に眼が疲れにくくなったり、「視界が明るくなった」という自覚症状の改善効果も見られたのです。
さらに、日本の眼科病院として140余年という最も歴史のある井上眼科病院(東京都)でも、井上賢治院長の下で正常眼圧緑内障の患者さんにカシスアントシアニン50ミリグラムの摂取と点眼薬を併用した二年間もの長期の治療研究を行ない、カシス摂取による視野障害の進行抑制効果が明らかになりました。
また、日本カシス協会の調査によるカシスアントシアニンの健康な人の眼圧に与える影響を調べた研究でも、摂取前との比較で明らかな眼圧の低下が認められたことが確認されています。
緑内障は、初中期では自覚症状がほとんどないため、気付くのが遅れがちですが、日ごろの健康習慣としてカシスアントシアニンをとることで、緑内障の進行を抑えるだけではなく、健康な人の緑内障予防にも有用であることが立証されたわけです。
さらに付け加えると、カシスアントシアニンには、多くの女性を悩ませる冷え性や瞼の皮膚の血流の停滞によるクマなどにも顕著な改善効果が認められています。
カシスはフランス語の呼び名です。日本語ではクロスグリ、英語ではブラックカラントといいます。
なお、眼科専門医の指導の下でもカシスアントシアニンのサプリメントが販売されています。
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4. カカオポリフェノール (高カカオチョコの「小分け食べ」による多くの有用性)
植物の持っている多くのポリフェノールの中でも高カカオチョコレートに含まれるカカオポリフェノールは飛び抜けて抗酸化力が高く、古来より滋養強壮の妙薬としても眼と体に非常に有用に働くことが知られています。その多彩な優れた効用は、世界的にも有名なイタリアのサン・サルバトーレ病院での臨床研究の成果から一躍世界に知れ渡りました。
カカオ含有量70パーセント以上の高カカオチョコレート25グラムを、1日5回5グラムずつに分けて3ヵ月間食べ続けたところ、肝臓の健康度を表す数値が改善し、さらにコレステロール値までもが改善したのです。
さらにこの習慣を続けると、インスリンの分泌が良好となって血糖値も改善し、脂肪の燃焼による内臓脂肪の減少とともに血圧も安定することが明らかになりました。
また、カカオのリグニンという豊富な不溶性の食物繊維には、糖の吸収をゆるやかにして血糖値の急上昇を防ぐ働きや腸内環境を良好にして便通を改善する働き、脳の活性化による認知症を予防する働きがあることも判明したのです。
なお、ポリフェノールは体内にためておくことができません。このため1日に25グラムの高カカオチョコレートを1日に5回に分けて5グラムずつ「小分け食」で食べる方法をお奨めします。
また、高カカオチョコレートを使って作った寒天、「チョコレート寒天」は食事前に食べると満足感が得られるため、食欲を抑えるという相乗効果も期待できます。
このように、日常的な高カカオチョコレートの「小分け食」によりカカオポリフェノールを継続摂取することで、その高い抗酸化力と血流改善作用により、緑内障や白内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性など多くの眼の成人病にも予防と進行抑制効果が特に期待され、当院でも多くの症例での病状の改善が認められています。
ところで、高カカオチョコレートは、「苦い」や「食べにくい」などの第一印象をお持ちの方も多いのですが、各メーカーからとても美味しく食べやすい高カカオチョコレートも発売されていますので、患者さんの病状と体質や味覚に合う商品を選んで適量を継続して摂取するようにお奨めしています。/p>