第34回眼 眼科は近視をどう考える?
- 視力回復辞典(視力回復の真実)
- 2006.07.20
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「近視予防法」!?
学校検眼で近視がわかり、言われるままに眼科を受診すると、よく言われる言葉…
それは、「まだメガネを使うほどではないようですので、様子を見ましょう」というもの。
でも「様子を見ましょう…」とは、具体的にどういうことでしょうか?
「様子を見ていれば、良くなるかもしれませんよ」ということでしょうか?
もちろん、そんなわけはありませんよね。
答えは「まだメガネには少し早いようです。ですが、近視がさらに進行して、また来てくれれば、メガネ処方箋を出しますよ」ということなのです。
眼科でよく聞く「ワック」って何?より
わが子が近視になってしまった!
大変、なんとかしなければ!!
…そんな気持ちで、子を持つ親は眼科の門をたたきます。
でも、眼科での対処は「なんとか治療や改善をしてほしい」という切望からは、程遠いもの。
ここに、割り切れないものを感じたことのある方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。
他の医療機関なら、からだに不具合があれば何らかの対処をしてくれるはず。
なのに、近視に対する眼科の対応は”様子見”だけなんて…
なぜ、いつから、そんなふうになったのか?
今回は、そういった眼科の問題について、ちょっと考えてみたいと思います。
今ではあまり知られていませんが、かつて、日本には国をあげて“近視予防”に努めていた時期がありました。
さかのぼること約70年、1939年(昭和14年)に『近視予防法』というものが出されました。
これは、現在の厚生労働省と文部科学省から出された通達で、「国民はこれを厳守するように指令され、また、義務教育の中でも周知徹底することが基本方針とされた」といいますから、まさに“国をあげて”近視予防に取り組んでいた、と言って良いでしょう。
国が一丸となって近視予防に取り組むなんて、すばらしい試みじゃないの??と、近視に悩む現代人なら、思うかもしれません。
実は、これには当時の国の事情が大いに関係していたのですが――
『近視予防法』とはどんな内容だったのか、まずはそれをご紹介しておきましょう。
視力を良くして戦争に勝つ???
◎身体を強健にすること ―― 偏食を避けて、戸外運動を奨励すること
◎目の疲労を防止すること ―― 目に適当な休養を与えること
◎姿勢を正しく保持すること ―― 読書距離は30cm以上、寝転んで読書をしないこと
◎採光に注意すること ―― 十分に明るい光線の下で勉強すること
◎印刷物を選択すること ―― 文字の過小なものは避けること
◎視力検査をしばしば受けること ―― 近視者は正確な眼鏡を用いること
これが、『近視予防法』の中身です。
出典元:老眼と正しくつきあう 丸尾敏夫著 岩波アクティブ新書)
内容を見ていて感じるのは、どれもまっとうで、目のためには大変良い生活習慣である、ということです。
名前からすると、何か特別な決まりごとがあったのかな、と思われるような『近視予防法』ですが、要は「近視にならないように、生活習慣に気をつけましょう」ということなのですね。
当時の日本は、第2次世界大戦に向けて突き進んでいるというご時世。
男子には兵役義務があり、強い兵隊を育成するというのが、国の最重要課題だったのです。
かつての日本にとって、最大の武器は「人」であり、人海戦術が頼みの綱だったわけですが、そんな事情のもとでは、戦闘能力を高めるため「良い視力」を持った人材の育成が不可欠だと考えられたのですね。
「視力を良くして戦争に勝とう」ということですから、今考えればとても無茶です。
でも、当時は大まじめに、国民の視力向上を奨励していた――というのが、『近視予防法』の背景なのです。