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第42回眼 夏は目の用心!プールと目の関係

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歴史ある”常識”のウソ

目を洗う常識

学校でプールから出た後に、励行される習慣があります。
それは「目を洗う」ということです。

現代の子どもたちも、ひと昔前、もっと前…の子どもたちも、学校では“プール後洗眼”の指導を受けてきたと思います。

昔から、プールサイドの一角にはU型の水道があり、プールから出るとまずそこで目を洗うように、と言われたものですよね。

“プール後洗眼”は、それだけ歴史のある習慣だと言えます。

しかし、この習慣が目にとっては良くない影響を与えるという研究結果もあり、産経新聞でこんな記述で始まる記事が掲載されたこともあります。

『水道水の消毒に使われている塩素が角膜を傷つけ目に悪影響を及ぼすことを、石岡みさき医師(両国眼科)、慶応大学眼科などの研究チームが実験で明らかにし、米国の眼科学専門誌に発表した。

学校現場で当たり前に行われる水泳後の洗眼は、かえって目にダメージを与える恐れがあり、研究チームは「洗眼はやめてゴーグルで保護した方がいい」としている。』

”常識”を覆す根拠とは?

覆す根拠

研究チームは、健康な男女各5人を被験者として実験を行いました。

  • 体液と浸透圧が同じ生理食塩水
  • 水道水
  • 生理食塩水に塩素を加えたもの

この3種類を使って各自が眼を洗う、というのが実験の方法です。

結果は――

いずれも、目を洗う前と比べて角膜の傷がやや増えた
⇒塩素を加えたものを使った場合に、特にその度合いが高い

目を保護する粘液の成分が、水道水・塩素入り生理食塩水で洗ったときに減少
⇒生理食塩水の場合のみ、減らなかったというものでした。

さらに、角膜表面のバリア機能を調べる検査では、塩素入りの場合のみ低下が認められたという結果も加えられています。

記事のまとめには、次のように書かれています。

『塩素が目に悪影響を与える主な原因と結論付けた。
研究班の加藤直子・慶大非常勤講師は「強酸や強アルカリなどが目に入ったとき以外、目を洗う必要はない。
プール後の洗眼は、さらに傷を広げる可能性があるのでやめた方がいい」としている。』

つまり、

  • 塩素によって、角膜に傷がつく
  • たとえ体液に近いものを使ったとしても「目を洗う」ことによって、角膜を傷つけてしまう
  • 水道水を使って洗うと、目の保護成分が洗い流されてしまうというダメージも加わる

という結果が出たわけです。
これが、今までの“常識”を覆す根拠になったのですね。

そもそも“プール後洗眼”は、厚労省がプール熱(発熱・結膜炎などを発症)の感染拡大を防ぐために呼びかけを始めたものです。

また、文科省も体育教員への指導手引で、水泳後の洗眼指導を例示しています。

これに対し、眼科医の間では“プール後洗眼”を問題視する声も上がっていました。
が、根拠となる研究が少なかったため、明るみに出なかった――
というのが現状だったわけです。

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